5.相互乗入れの方法
JRの様な鉄車輪を用いた普通鉄道の場合,軌間の異なる軌道間の相互乗り入れには以下に示す方式があります。
Ⅰ.台車交換
Ⅱ.車輪のゲージを可変(輪または台車を特殊な構造とする)
Ⅲ.3線・4線軌道
Ⅳ.対面乗換
Ⅰの方式(台車交換)
①台車交換
台車交換方式は,北京とモスクワを結ぶ国際列車で中国とロシア国境において実施されています。中国の軌間は1,435mmの標準軌であるがロシアは1,524mmの広軌であるために,国境での台車交換があります。客車の台車交換や機関車の付替に多くの時間と人手を要し,1時間近い停車時間となっています。
日本では台車交換の例は少ないのですが,近畿日本鉄道では,車両工場の軌道が標準軌であるために,狭軌用の車両が入場する際は境界駅で仮台車に交換している例があります。日本国内での営業用旅客列車の例としては,1988年に標準軌のオリエント急行の客車を狭軌のJR在来線で走行させるために台車交換を行ったことがあります(企画名称:日立オリエント・エクスプレス’88)。しかし,これには,台車交換に時間がかかること,動力分散型車両への適応が難しいことなどの欠点がありました。
②トレイン・オン・トレイン
台車交換の類似なものとして,狭軌用の貨車を標準軌用の専用貨車に積載してそのまま直通運行させる方法があります。この方法は,北海道新幹線・青函トンネルへの導入を前提に検討された方法です。
青函トンネルは,新幹線開業後,3線のレールにより標準軌の新幹線車両と狭軌の貨物車両の両者を運行させています。しかし,貨物列車の最高速度は110km/h以下であり,待避設備が青函トンネル内に無いため,新幹線の運行列車数が限定されています。また,貨物列車と新幹線のすれ違い時に風圧で貨物(コンテナ等)の転落や破損の恐れがあるため,新幹線の最高速度は140km/hに制限されています。これを解消するため,図8に示すように,貨物列車を標準軌(新幹線)の専用車両にそのまま搭載して輸送するシステム(トレイン・オン・トレイン:Train on Train)導入をJR北海道が検討しています。
③コンテナ移載機による台車交換
①に示した台車交換は人力によるものですが,新幹線在来線直通旅客輸送のため,旅客コンテナ列車を用い,図9に示すコンテナ移載機による台車交換の方法を1980年代に国鉄の鉄道技術研究所が検討しています。
コンテナ移載機による台車交換を行う移載基地には,単線の新幹線軌道と単線の在来線軌道が並べて敷設され,その間に,2つの軌道上に停車したフラット車両のデッキ高さと同じ高さの幅の狭い中ホームが設けられています。
旅客コンテナの移載は,①フラット車両に装備されている駆動機構により旅客コンテナを横に押す,②荷重支持コロによりデッキ面上を転がす,③隣に並んだ異ゲージのフラット車両にまで横移動させる,の手順で行います。
なお,中間にある中ホームは,旅客コンテナ移載中の荷重を中間で支え,旅客コンテナの横移動に伴う荷重移動で車両が一方に傾いてしまうのを防止するために設けられているものです。図10は,鉄道技術研究所で試作した1/12の動く模型です。